俺は走っていた
まだ日も昇りきらない朝っぱらから
家から10分の土手を、橋4つ分
まあ、軽いランニングコースってわけだ

そんな俺がに会ったのは去年の6月初め
俺たちが高校2年の頃だった


「あれ〜?鈴鹿くんも?」
「あん?」

土手の下の通りから駆け上がってきた
って言うか、その頃は「」って呼んでたけどな


「おめえか、んだよ」
「私も朝練、いつもここ走ってるよ」

そう言うと俺の隣を併走した
でもが俺のスピードについてこれるわけなくて
そのうち足音は後ろへ遠ざかっていった
俺は自分が折り返す橋まで来て、反対側へまわる


「じゃね〜」

川の向こうからそう声をかけてきたに軽く手をあげて俺たちは分かれた
週のうち、2回会えば多いほうだった

それから夏休みになって、早朝ランニングの時間が少し変わって
とは全く会えなくなっていた

それ自体、俺はなんとも思ってなかった、ああ、その頃はな
あいつのこと別に興味も無かったし
第一走るだけだから、話をすることも無かった
まあ、単なる同級生でしかなかったってことだ


そんな俺たちが初めて話らしい話をしたのは9月になってから
まあつまり簡単に言えば、2学期ってやつだ


「あ〜、鈴鹿くん久しぶり〜」
「よ〜」

そして、は俺の横を走った
(そのうち遅れんだろ)
そう思っていた俺の予想を裏切って、ずっと隣にいた


「じゃぁね〜」

そういってはまっすぐ土手を走っていった
俺は橋の上からチラッとあいつを眺めて、また自分の走る道を引き返した

次の日も、その次の日も、また次の日も
は俺に声をかけてきて、そして隣を走った
で、9月6日の朝、こう言ったんだ


「ねぇ、修学旅行」
「あん?」

「自由行動一緒に回ってよ」
「っんで、俺がおめえと」

「足が速いから」
「はぁ?」

「とにかく考えといて、じゃね〜」

走り去るの背中を見送って

何で俺がと?

って思っていた
俺には全く意味がわからなかった
まあ、別に嫌いなわけでもねぇし
誰と回るかなんてのは決めてなかったから
と一緒でもよかったけど、俺が足が速えからってのはなんだ?


翌日、また同じ時間に俺たちは土手で会った
と言うより、土手の上では俺を待っていた


「おはよう!」
「お〜」

併走しながらは俺にこう切り出した


「修学旅行、一緒に回ってくれる?」
「だからよ、んで俺が?」

「鈴鹿くんなら、私についてこれそうだからって思ったんだけどな」
「はぁ?」

「自由時間で回りたいところ、たくさんあるんだよね」
「おぉ」

「全部回ろうと思うと結構忙しく走りまわるわけよ」
「へぇ」

「そうなると、もたもたしてる人と一緒じゃつらいじゃん」
「ほぉ」

「でも鈴鹿くんが私についてこられないと悪いから、やっぱいいや」
「んだと?俺がおめえより遅いわけねぇだろぉが?」

「そうかな〜?じゃ、試してみる?」
「あぁ?」

「明日の朝、さっきの橋からこの橋まで競争しない?」
「だからぁ、俺の方が」

「とにかく私が勝ったら修学旅行は一緒に回ること、じゃね〜」


(あいつ、この俺様と走って勝てると思ってんのかよ?)


翌日、宣言どおりは俺を待っていて
俺たちは橋から橋までの間を競争したってわけだ

結果?

もちろん、んなもん、俺が負けるわけ無いだろう


「はぁはぁ、す、す、鈴鹿くん、やっぱり、は、早いね」
「当たりめえだろうが、俺を誰だと思ってんだ」

は苦しそうに息を切らせ、膝に手をついて肩を上下させていた


「大丈夫かよ?」
「うん、だ、大丈夫、でも、本気で走ったのに負けて悔しい」

「そもそも俺に勝とうってのは、無理なんだよ」

少し得意になった俺を見て
額の汗をタオルでぬぐいながらは言った


「休みの間、相当走りこんだんだけどな、やっぱ無理だったか〜」
「夏休み?おめえ走るのさぼってたんじゃねえのか?」

「まさか〜、気合入れてこの日のために走りこみしてたよ」
「この日のためにって、俺と走るためにかよ?」

「うん、もちろん」

にっこり笑ったは、めちゃくちゃ清々しい顔してやがった
それにしても、何で俺と走るために、って俺は思った


「でも負けちゃったもんは仕方ない、じゃ、また学校でね〜」

そういうと、は手を振って走っていった

夏の間走りこんでいた
そう言われてみれば、6月は俺についてこられなかったのに
併走するようになってたんだよな、あいつ


翌日俺は、いつもの土手でが来るのを待っていた
いつもあいつのほうが俺を見つけて近寄ってくる
でも、俺はを待っていた


「よぉ!」
「おはよ〜、今朝は早いじゃん」

そして俺たちは何も言わず走った
いつものペースで、ただただ走った

隣で走っているの足音は
乱れることも無くて、無理に併走しているわけじゃないってことがわかった
だから俺は、いつも分かれる橋まできて、こう言ったんだ


「京都、一緒に走ってやらぁ」
「へ?」

「だからぁ、修学旅行、おめえと一緒に走ってやるってんだよ、じゃな!」

橋を渡って、引き返す俺の後ろから


「ありがとー!」

の大きな声が聞こえた
俺は振り返らずに軽く手を上げた



数日後、俺たちは修学旅行を一緒に回った
が言うとおり、本当に走り回った
そして俺は、のことを

「話すと面白れえやつだ」

って思った

修学旅行の自由行動で俺を誘った理由も聞いたし
案外可愛いところがあるんだなって・・・思ったわけだ

え?
旅行で俺を誘った理由?

なんでもよ、友達が男と回りたいって言い出して
邪魔しちゃ悪りいから気を使って自分も男と回るって言ったらしい
だけど誘う奴もいないし、どうしようって考えて
はば学じゃ一番足の速い俺を選んだってことだな

そんなことは、まあ、どうでもよくて
それからは、なんつうか、その、あれだ!
こいつのことが・・・・その、気になるっつうか
とにかく、高校3年になった今も、俺は



「おはよ〜!」
「おぉ!」

こうして、毎日のようにと走っている
お、俺は・・・きっと

・・・・・

だぁぁぁぁーー、んなこと考えたら恥ずかしいだろぉが!


「鈴鹿くん、どうしたの?」
「あ、あぁ?」

や、やべぇ声が裏返りやがった


「顔が赤いよ、熱でもあんじゃない?」
「だ、だ、だ、大丈夫だ」

「無理しないほうがいいよ、今体調崩したら試験がもうすぐで辛いからね」
「き、期末か、くそぉ、またテストかよ」

「うん、赤点取らないようにしてね」
「お、おめえもな!」

「あはは、そうだった〜私もだ」

はそういって笑う
俺はその笑顔が・・・す、す・・・・

ふぅ


俺は橋で曲がらずに、の家の前まで併走する
別に、し、し、下心があるわけじゃねぇぞ
なんつうか、こいつも一応女だし
一人で走って何かあったら困るからな


「じゃ、またあとで学校でね!」
「おう、じゃな!」


今日こそ、今日こそ、言おうと思ってたのにまた言えなかった
明日こそ、にこう言うんだ


、夏休みは花火大会に行こうぜ!」

ぜってぇ、言ってやる
高校最後だかんな、一緒に花火行こうぜって・・・


そうしたら・・・あいつに・・・・














だっぁぁぁぁーーー!
考えただけで顔が熱くなるってのはどういうこった!

そうか、まだ6月だってのに、暑いんだよ!
そうだな、暑いからだよな!



END




こちらのイラストは「ななくさがゆ」の由比さんにいただきました!
大胆にも彼女にキスをする(寸前)かずくんです!

由比さんにイラストを頂いたのは、2005年1月16日でした
この日は管理人の誕生日で、大好きなかずくんを前に狂喜乱舞♪
そして

「イラストに合うお話を書いてサイトに出すので待っていてくださいね」

とお願いして既に5ヶ月
由比さん、もらいっぱなしで、本当にもう、ごめんなさいでした(平謝り)
ようやく仕上がったお話も、イラストにあっているのかどうか、非常に微妙!
(夏の話なのに服が冬服です、ああ、どうしましょ!)
でも、久しぶりにかずくんのイラストを堪能して大満足です

由比さん、ありがとうございました!
「ななくさがゆ」へはリンクページからお出かけください♪



  
  gift−menu      top